満州開拓 富貴原郷開拓団の記憶

満州開拓-富貴原郷開拓団の記憶 - 箕輪町郷土博物館開館40周年記念冊子 - 箕輪町図書館蔵書のデジタルアーカイブ


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―十五日ちょっとすぎくらいにもう分かってたんですか?宮下:負けたって言ったんだもんで…。松沢:過ぎたかもしれんね。ほいだけどね、あのお陰だったの、その衆が帰ってきたもんで良かったけえど、そうじゃなきゃあ子供とねえ、男なんて二・三人しか居なんだに。それこそ。若い衆が帰ってきてくれたもんで嬉しかったよ。ほうじゃなきゃあ本当困ったもの。―花岡の方から最初に知らせてきた?宮下:そうでもねえな、そこらじゅうみんな召集があったで。―どの集落も宮下さんの、勝彦さんたちが帰って来たときには終戦はもうその時点でもう分かっていた?宮下:分かったの。そうしたらあくる日にもう…。―花岡は襲撃されてるんですよね。宮下:襲撃されちゃった。わしはメリヤスのシャツを着て、ね、まあ勝美を背負ってったでいいけど、置いてったらすぐ殺されたね。畑から見えたんだもの。松沢:なにあれかえ、終戦になってすぐそうだったの?宮下:うん。松沢:あれ、わしたちは知らなんでたんだに。泉平ってうんと奥だもんで。夜中にねえ、二時頃かなあ、ものすごくねえ、家が無いら、わしたち焼けちゃったもんで。―どこに住んでたんですか?家が無くて。松沢:泉平のねえ、何かうんとまだねえ、こっちの奥の方に満人の家があってねえ、ちょっと大きな。そこでねえ、共同炊事と共同作業してたの。―なるほど、満人の家を借りて?松沢:そうそう。ほしてわし達は、わしとねえ、倉田さん(倉田ていさん)と、武田さんちゅう人(武田千代子さん?)知ってるらね。―武田さん?どこの武田さん?松沢:伊那市。大坊だかどっか知らんけど、向こうの人だよ。―倉田さんていうのは三郎さん?松沢:三郎さんの奥さん。酒井さん(酒井幸子さん)と四人でね、あの、炊事をしていたの。―みんな女の人っていうことですね。松沢:女、一人子持ちの人だけ。あとは二人とか大変だから、一人子持ちの人だけ炊事をみんなね、男の衆に、共同作業だもんで、炊事をして暮らしてたんだけどね。ほいでものすごく夜中にトントントントン叩くもんで何か来たぜっちゅってねえ、ほうしたら「日本が負けたでね、こんなとこにいるとすぐ殺されちゃうで、今タークルチャーで迎えに来たから早く乗れ」ちゅうじゃん。―誰が迎えに来たんですか?松沢:男の人が。本部?どこから来たかねえ、忘れちゃったよ。ほいでそこ(タークルチャー)に乗ってねえ、ほいであのう、何しろ荷物は無いわけだ、えれえ、もう火事で焼いちゃったもんでねえ、そこにあるもんだけそうにして。ほいでそこへ乗って大和まで行った。―大和へ?松沢:ほいで大和で世話になったよ、みんな。―大和へ行く時には、泉平には四家族しか居なかったわけですか?松沢:大勢いた。吉田さんとかねえ、居たけえど、大勢の子供でねえ、大変だから、あのそれぞれね、あの本部だかどこだか知らんけえど、そういうところに居たの。片桐さんとか。―片桐さんも泉平だった?松沢:ええ、泉平。四人一人子持ちが、わしと武田さんと倉田さんと酒井さんと、四人でね、炊事をしてたの。―そこへ負けたって来て、タークルチャーに乗せられて…。松沢:大和へ来て、そいで大和で、私植田さんの家に行ってね、世話になったわけだけどね。―大和では襲撃とかあったんですか?松沢:あったの。それからねえ、さあ次の日だに、それこそもう匪賊が来たっちゅって何も無いよ。ほいてヤカンへ水汲んでさあ、青酸カリだか何か持って…。松沢:小笠原さんが持ってた。―それは宮下さんも一緒?松沢:一緒じゃない、(宮下さんは)花岡だもんで。―泉平と大和の人は大和で一緒になって、匪賊が来るからっていって山へ逃げて、そこで青酸カリを飲めという話になった?松沢:飲めっちゅうことで、へえ飲むつもりでいたんだけえど…。宮下:わし達は本部と、ねえ。花岡と本部で一緒にいたわけだ。―二つに分かれてたんですね、基本的に。宮下:そしたら(大和・泉平の人達は)わし達が匪賊だと思って、山に…。―ああ、そういうことなんですか。宮下:そこにいた衆が…。―花岡は本部に逃げたんですよね?宮下:そう。―それで本部と一緒になって、どこへ行こうとしたんですか?宮下:わし達は伊南。伊南の開拓団。


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