満州開拓 富貴原郷開拓団の記憶

満州開拓-富貴原郷開拓団の記憶 - 箕輪町郷土博物館開館40周年記念冊子 - 箕輪町図書館蔵書のデジタルアーカイブ


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―どこで?村で?泉平の?松沢:泉平じゃない。終戦なってから。屯長だかの家でみんなお世話になった、あの時。ほいで出て行った時にそこに居なんだら、そこから離れた時にねえ、何かしらこういう小屋のようなものがあって、あのう小川さん、今の倉田さんだけど、一緒だったけどねその人も、馬をどっかから引きずって来てね、でっかい馬を。その小屋へ、そいでね…。宮下:そいで料ったの?松沢:うん。ほいでわし、死んだ馬を、お醤油も何にもしなんで食べたぜ。いいとこっきり取って。カハハハ、おもしろいねえ。宮下:あっちの衆は味噌をこせえるにね、日なたに置くの、甕で。ほうしちゃあ毎日毎日突いて、ほうすると真っ赤い味噌になるの、どろどろの。―大豆を突いてるってことですか?宮下:と思うよ。ほいでキビのまんまにね、あのキビへ乳を、この、ね、わるくしてこうやってね、それをスワンサイつって酸くなるじゃん、それをかけて食べて、うん。―発酵した?宮下:発酵したやつを食べるの。松沢:白菜ずら。白菜は塩漬けをしないんだよ。塩を使わなんで漬けるの。宮下:木曽と同じえ木曽と。―酸っぱいの?松沢:酸いのよ。それを料理するに、豚肉とか油いためとかそういうことをしてね。宮下:こんな厚い豚肉ねえ、白いとこがあったか、それにね、あの今わしたちが、あの何、かたくりでこせるのかなあ、芋だと思うよ。松沢:片栗粉だ。宮下:それがあのう、ほら、おそうめんみたいに。松沢:あれ美味しかったなあ。宮下:春雨、春雨の太いやつ、それと一緒に煮てくれるの。松沢:馬鈴薯がね、本当に美味しいの。向こうは。もう、ね。―それこそ肥料なんて何にもやってない馬鈴薯?松沢:ええ。美味しい馬鈴薯だよ。わしね…思い出すよ色々。―食べ物は本当に良かったんですね。宮下:良かったよ。松沢:終戦になってから、もうねえ、えらいことだったけえど。宮下:あの、お米も配給してくれたわな。松沢:ねえ、何かねえ、十日十日かなあ、忘れちゃったけど、配給があるの。塩にお味噌からねえ、油にお米から…。宮下:配給が日本から来るの。松沢:ほいだけえどね、お金払わなんだんだよ、全然。どうなってるかなえ、後であれかねえ、作物が採れてからするのかどうか知らないけど、そのまんまだに。砂糖から全部。入れ物いっぱい持っちゃあ取りに行ったものねえ。宮下:日本の方から来たと思うよ。松沢:お金っちゅうものは持ってなんだねえ。お金要らなんだのよ全然。お店が無いし、全然。本当。―魚も馬鹿みたいに釣れたなんて言ってましたけど…。宮下:ああ、川があるもんで。わしらも獲りに行った。―餌をつけなんでも釣れたみたいなことを言ってましたけど?宮下:そう、魚いっぱいいたよ。松沢:いっぱい獲れたっつうじゃん、魚。わし知らないよ、泉平そういう川が無いもんで。釣ったこと無いよ。―あ、そうなんですね。村によって大分環境が違うんですね。松沢:あのねえ、小池さんがねえ、あれだに、豚をどっかから獲ってきたりねえ、ほいといてねえ、みんなに分けてくれるの。洗面器だかこういうボールへ一杯ずつ、入りきらんだよ。―野生のやつを?松沢:いや、野生じゃないんだけど、飼ってるんだけど…。―放牧みたいな?松沢:うん、やたらねえ、その巣に入れとかないもんで。宮下:そうそう、ああいう衆はね。松沢:そこらに遊んだいくじゃんね、そういうやつを獲って来るのね…。宮下:あの人、小池さんは帰ったのかなあ。松沢:小池さんは兵隊へ行かなんだの。宮下:早く帰ってきたかなえ、内地へ。松沢:一緒だと思うよ。天草に居たんだもの。どこへどういうふうになってたかねえ。小笠原さんちゅう人知ってる?あの人ねえ、何ちゅうかねえ、獣医さんのような感じ、こっち来ても。あの人良かったんだに、ちょっと何か傷になると歯磨き粉なんかつけてやって。宮下:そうなんだよ。―え?歯磨き粉で治るんですか?家畜に?松沢:何だかしらんけど、ハハハ…。―病人?人に?


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