満州開拓 富貴原郷開拓団の記憶

満州開拓-富貴原郷開拓団の記憶 - 箕輪町郷土博物館開館40周年記念冊子 - 箕輪町図書館蔵書のデジタルアーカイブ


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―楽しいこともありましたか?松沢:ええ。宮下:ほいで何しろ畑にね、あくる晩に行ってみりゃあこのくらい伸びてるに。―え、何が伸びてるんですか?宮下:野菜が、フフフフ。なあ、おい。伸びたなあ。―一日でですか?松沢:ほいだけえどねえ、あの種をねえ、今なったらここだったらもうポットへ蒔いたり箱まきだかしたりするじゃん。直蒔きだに、菜っ葉でも何でも。―それで生えてくるんですか?宮下:ええ。松沢:ほいでこんなに大きくなるんだよ。スイカだって成る。―あんな寒いところでもスイカ成るんですか?松沢:成る成る。―そうですか。松沢:夏はなえ。夏は短いんだけどね。―じゃあ食べ物はいくらでもあった?松沢:あったよ、ねえ。―いい所でもあったんですねえ。松沢:わしゃあどんねにかねえ、覚悟をしてったの。本当に…。―とんでもない所じゃないかと?松沢:ええ。ほいでうんと働いてね、開墾しなきゃならんとかそう思ってた…とんでもないわ。宮下:開墾どころじゃねえわ、な。松沢:毎日遊んでるの、若い者が。宮下:うんと畝が長いもんで、お茶持ってってやるの、わしらね、畑に行くもんで。二頭から三頭でみんなするもんで、耕作を。松沢:タークルチャーでね。宮下:帰ってくるのを見るとねえ、行って帰ってくる間にお茶過ぎちまうもんで。松沢:ねえ、もう広いよー。宮下:何町歩もらっただか?松沢:あのなあ、八町歩だとか言ってた。七町歩だか八町歩だか。―これ倉田さんに聞いたら写真があって…。松沢:倉田さんはおじさんがね、本部勤めだったからね。―ちょっと薄いんだけど、何かちょっと畑みたいなのがずうっとあるんですよね。宮下:うん、あるある。何か作ってある。松沢:ああいう衆は、あれかね、畝を全然曲がらなんで作るんだけど。不思議だね、縄をつるわけじゃないに。全然、ねえ。―すごいですね。松沢:すごいよ、あっちの衆は。宮下:ほいだし肥えてるんだね、土が。松沢:肥料無肥料だに。宮下:肥料なんてやったことがねえ。―それで勝手にどんどん生えてくる?宮下:そうそうそう。松沢:あのね、そのおっさまがね、嶺頭院のおっさま。あの、わし知らないけど、あの、慰問に来たらしいよ。宮下:そん時にあれが来たんだよ、堀さんが。久保の堀さんつう人が来て…。松沢:ふーん、あれ。嶺頭院のこのおっさまは来てくれたって。宮下:そしたら来て、慰問に来てね、本部にね、本部から、おらちょっと行きたいとこがあるって言って、南箕輪の久保だもんで、そこへおら行き会いに行ってきてえでって言って来てくれたの。そん時に、おい何食いてえって言ったら、おらちょっとまあ豚食いてえわつった、おじいさん。そしたら堀さんつう人は、何かで来たんだな、あれ。慰問に来たんだよ。松沢:堀さん?そりゃあ知らないねえ。宮下:ほいだら豚肉すぐパクついて。松沢:泉平なんて一番奥の方だもんでねえ。うちのおじいさんは途中で、あの、それこそ本部勤めになったんだよ。うちのおじいさんが。本部。それで馬で通ったに。乗馬で。―本部までどのくらいあったんですか、泉平から。松沢:どれくらいだったかねえ、わしゃあよく知らんよ。宮下:みんな馬に乗ってったけえど。松沢:馬で通ったに。―花岡と本部は近かったんですか?松沢:割合近いと思う。宮下:近いかなあ?松沢:近い、一番近いの。大和の方が近いかね?泉平ってうんと遠いに。―ジャラントンから来て、手前が花岡で、次が本部?松沢:そうそう。―ほいで、その奥が大和?宮下:大和。


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