満州開拓 富貴原郷開拓団の記憶

満州開拓-富貴原郷開拓団の記憶 - 箕輪町郷土博物館開館40周年記念冊子 - 箕輪町図書館蔵書のデジタルアーカイブ


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宮下:そう。あの箕輪のね。―箕輪の役場で?この間の写真が、あれがそうかもしれないっていうやつですよね。宮下:うん。―その時に、さっき言った小池さんとか…。宮下:そう。小池さんと、わしは二組だったな。―結婚式をしたっていうことですね。宮下:小池さんとね。―それをしてから向こうへ行った?えーと十八年、十九年?宮下:十九年。―二月?宮下:わしたちねえ、幾月?わしら…。松沢:同じ年だったよね。宮下:同じ年だけえど…。ちょっと遅く行ったもんで。松沢:わしは早かったに、一月だもんで。―十九年の?宮下:わしゃあ三月末だ。ねえ。―(松沢さんは)十九年の一月に結婚式をして、その後行ったということ?松沢:そう、新潟へね。新潟港からだもんで。宮下:そうそう。松沢:長野のね、一晩泊って。ほいで新潟でね、新潟港から出たわけ。ほいで朝鮮の羅津(ラシン)つうとこへね。宮下:わしは山崎何だったかなあ、名前は?松沢:誰?宮下:山崎さんよ、正一さんの兄っ子よ。(※山崎千十氏と思われる)松沢:ああ、あの人。宮下:酒飲んだおいさん。松沢:一緒だったの?宮下:一緒に行ったの。松沢:あれえ、そうかね、ふうーん。―その時一緒に行った人他に誰か覚えてますか、宮下さん。宮下:わしは覚えてねえなあ…。松沢:尾崎さん知ってるかねえ?西箕輪の尾崎さん。―一緒ですか?松沢:一緒だったよ。―家族でですか、尾崎さんは。松沢:あの人まだ独身だったの。独身で行ってねえ、ほいで今度次の年に奥さんが行ったわけ。宮下:山崎さんも独身だ。松沢:そいであの人ねえ、あの、それこそ召集でとられちゃって、ほいであのう、妊娠しててねえ。―奥さんが?松沢:奥さんが。ほいであのう、途中で亡くなっちゃったんだよね。―尾崎さんの奥さん?子供が?松沢:そいで新京でね、可愛そうだったよ。富貴原会の衆がみえるって情報が入ったんだって。そいで、あのう、待っててくれたんだよ。―じゃあ新京に先に着いてたんですか、尾崎さんの家族は?松沢:家族じゃない、独身で行ってたの。ほいで今度結婚して、また貰いに着たんじゃない?―尾崎としゑさん?大正九年生まれ?松沢:そうそう。その人はその前に亡くなっちゃたの。お産で亡くなっちゃったの。―ああ、お産で。終戦の前に亡くなっちゃったってこと?松沢:終戦前じゃないよ。天草に居た頃。―四月って書いてあるから…そうか、そうですね。天草に居た頃?松沢:天草から出てすぐらしいよ。―ああ、ほいじゃあ現地の村に入ってすぐに?出産の時に亡くなった?松沢:そうだと思うよ。その、原住民の家に世話になってたか何か知らないけどねえ、そういうことは。―旦那さんの方は兵隊に?松沢:兵隊に行っててねえ、新京にねえ、あの富貴原会の衆が来るっていう情報が入ったんだって。ほいでその時にねえ、ちゃんとその尾崎さんと安藤さんのおいさん、二人で道端で待ってたに。(宮下さんに)知ってるら?知らん?ほいで富貴原会の衆が通って、ほいだらその尾崎さんと、その安藤さんがあの道端に居てね、情報が入ったもんでねえ、今に来るかと思ってねえ、待ってたちゅってねえ。―だけど尾崎さんの奥さんはもう亡くなっていた…。松沢:奥さんもう居ないら、亡くなっちゃったもんで。可愛そうだったんだよねえ。あのいいおいさんでねえ、優しい、尾崎さんちゅう人。南箕輪のねえ、郵便局に出てたの、尾崎さん。―尾崎藤市さんっていう人ですかね。松沢:そうそう。西箕輪だった。梨の木だかどっかの人だぜ。ええ。―その人と行く時一緒だった?


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