満州開拓 富貴原郷開拓団の記憶

満州開拓-富貴原郷開拓団の記憶 - 箕輪町郷土博物館開館40周年記念冊子 - 箕輪町図書館蔵書のデジタルアーカイブ


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・九~十月頃、ハイリンに集結するといわれ、ハルピン駅に集まった。駅は混乱でごった返していた。弟を捜したがわからず、その後列車に乗り込んだ。・十~十一月頃(寒い頃)、牡丹江から列車でシベリヤに送られた。ロシア兵にはウラジオストクへ集まり日本へ送られるといわれたが、方位磁石で、逆の内陸の方へ向かって行くのがわかった。・屋根の無い列車に一週間位乗り、バイカル湖に着いた。そこで捕虜にされることを知った。タイセットで降ろされ、七キロくらいの所に収容所があった。身体検査で腕時計や万年筆等全て取られた。・鉄道建設が捕虜の仕事であり、材木の伐採、削り、組立、壁塗り等を行った。ダニ・シラミが多かった。その後二・三の収容所を転々とした。・小隊長小口さんの計らいで、伐採した木を馬で鉄道まで運ぶ仕事にまわしてもらった。現場から鉄道までは二キロ位。優秀者は早く帰れるという風評があった。ある日馬を叱って傷つけてしまったところ、馬好きの所長に見つかり、数日間牢屋へ入れられた(禁固状態)。この時暇だったので、レーニンの本を読み共感した(元々捕虜になってまで昔の軍の階級が生きていることに矛盾を感じていた)。・二百四十キロ奥の収容所へ行き、社会主義の講習を受けた。そして講師の資格を取って戻り、昼は外の仕事をして、夜は日本人捕虜に対し講師の仕事をした。・昭和二十四年九月、帰国のためタイセットに集合。ウラジオストク(ナホトカ港)からエザン丸に乗り、舞鶴に上陸した。舞鶴ではGHQが居り、旅費をもらい、木下まで帰って来た(二十四年十月南宮神社で歓迎会)。○今の感想・開拓団には希望して行った。今となれば侵略戦争の手先にされていたことがわかったが、当時は土地がもらえて、小作が自作になれる(一攫千金)というのが魅力で、無我夢中だった。二平成十七年三月二十一日倉田作子氏(箕輪町南小河内/大正八年十月十七日生)※要約○渡満の理由・郷里は宮田。伊南開拓団の農事指導員をしていた春日勘一さん(作子さんの姉の夫)の紹介で、箕輪村役場に勤めていた小川巌さんと昭和十八年に結婚。その年の四月八日に渡満した。・小川さんとの結婚話が出る前は別の人との結婚話があったが、それをとりやめて小川さんと結婚。結婚式は三日町の学校で合同結婚式(小川夫妻と山口三郎連・国子夫妻の二組)を行った。・全ての財産を処分して(郷里に何も残さずに)満州へ行った。国策に沿って行ったので抵抗は無かった。○渡満・行く前の訓練は何もしなかった。・昭和十八年四月八日に箕輪村を出発。どこを通って行ったかは細かくはわからないが、朝鮮まで船で行って、そこで一泊して、鉄道でジャラントンまで行ったと思う。○現地での生活・夫が幹部だったため本部にいた。着いた時には本部しかなく、その後、花岡、大和、泉平の順に集落が出来た。・行ってすぐは共同生活であり、食事は粗末だった。その後個人生活になった。・最初は現地の人達とうまくいっていた。開拓団の人達(日本人)が威張っていた(終戦後は逆転)。・終戦までは比較的平和だった。内地の人達の方が大変だったと聞いているが、満州はのんびりしていた。○終戦、引き揚げ、帰国・ソ連参戦も終戦も知らなかった。終戦後、現地召集された人の中で団に帰って来た人が何人かいて、その人達によって終戦を知った。その後、すぐに匪賊の襲撃に遭った。・現地(阿栄旗)での襲撃は三回、亡くなった人もいた。目ぼしいものがあるうちは襲撃に来た。子どものオムツに隠していたものも全て盗られてしまった。・しばらくの間、現地の日本人学校の体育館に集合して、現地の住民から食料を買って、芋粥や一日一食のおにぎりで生活していた。また、現地人の畑に残っていた芋・大豆・小豆などを拾って来て、トタンで焼いて食べた。・そこでは牧草を刈って来て、その中で寝たりしていた。また、ソ連兵が来た時には、若くみられないように顔に炭を塗ったりした。・その後、寒さと飢えで集団生活が出来なくなり、副団長白鳥さんの指揮のもと、分散して、それぞれ現地人の家に家族として入れてもらい、生活せざるを得なかった。・(作子さんは)鈴木暦造さんの家族として、子供と一緒に現地の村長さんの家で生活させてもらった。この家では、松沢良子さんが植田福弥・正子夫妻の家族として一緒に生活していた。クリー(苦力)として働いた。・鈴木暦造さん、植田福弥さんは面倒見の良い人で、おかげで生きて帰って来られた(暦造さんは帰国直前に死亡)。・現地人の村長さんも良い人だったので、食事も良く、あまり苦労はしなかったが、多くの女性が現地人の妻として、そこで生活させてもらうしかなかった。そうしなければ生きられなかった。現地の人も独り者が多く、お金が無いと結婚も出来な


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