満州開拓 富貴原郷開拓団の記憶

満州開拓-富貴原郷開拓団の記憶 - 箕輪町郷土博物館開館40周年記念冊子 - 箕輪町図書館蔵書のデジタルアーカイブ


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第十一次太平溝富貴原郷開拓団団員は、上伊那北部十ヶ町村の出身者で、昭和十七年四月一日、興安東省阿栄旗太平溝に入植し、太平溝富貴原郷開拓団と称した。次別第十一次(昭和十七年)名称太平溝富貴原郷開拓団(たいへいこうふきはらごうかいたくだん)入植形態集団分郷移民入植式昭和十七年四月十日所在地興安東省阿栄旗太平溝(こうあんとうしょうあえいきたいへいこう)送出母体上伊那郡北部十ヶ町村、伊那町・南箕輪村・西箕輪村・西春近村・東箕輪村・箕輪村・朝日村・小野村・川島村・中箕輪村の町村長会によって組織された、富貴原郷開拓団送出本部終戦時の人員九七戸二九六人うち県外四戸七人入植までの経過分郷計画の樹立と先遣隊の送出上伊那郡の町村長会が、中箕輪村・高遠町・赤穂町の三か町村を中心として、三つの分郷計画をたてたのは、昭和十六年春であった。すでに県下では、分村・分郷も各郡に及び、青少年義勇隊の送出も、信濃教育会が積極的に推進し、戦時色が濃い中で否応なしに、やらなければならない状況であった。郡の北部十か町村(伊那町・南箕輪村・西箕輪村・西春近村・東箕輪村・箕輪村・朝日村・小野村・川島村・中箕輪村)では、中箕輪村の役場に送出本部を設け、関係町村長が送出の母体となり、本部長にには中箕輪村長清水東洋雄、事務局長には助役市川八十吉が選ばれた。郡建設本部が策定した分郷計画に基づいて、三か年間に三〇〇戸の送出を目途とし、活動が開始された。七月には「信濃毎日新聞」を通じて、先遣隊員の募集宣伝が行われ、各町村では推進委員会を設けて、送出説明会も開き、目ぼしい人の戸別訪問をすすめた。しかし、自ら志願する者もなく、いたずらに日が過ぎていった。あせりを感じた本部では、幹部の推薦を先行させた。団長はじめ幹部の人達は、案外すらすらと運んで、九月には体制がととのった。団長には朝日村の村上顕、経理指導員には中沢村の林英生、警備指導員には伊那町の田中二一、農事指導員には伊那町の北沢正吉が就任した。この時点で、本部長は新任村長大月茂にバトンが引渡された。難航した基幹先遣隊も、岡正を隊長として、期日ぎりぎりに五人が選考会にのぞみ、幹部との顔合わせを済ませて、十月一日、八ヶ岳修練農場に入所した。ここでは、上伊那郡下の三団が、各団五人ずつ十五人で上伊那班を編成し、高遠町出身の沢上定男を班長として、内原の義勇軍方式によって日課が続けられた。他の班より気合が入っていて、成績優秀で、二日早く退所した。いったん帰郷して準備をととのえ、十一月半ばすぎに祈願壮行会があって、郡・町村の代表者の見送りをうけて郷里をたち、新潟港から羅津・牡丹江を経由して、十一月二十三日、佳木斯のすぐ手前の第一次弥栄村の現地訓練所に入所した。ここでは団の都合で、部落の使役に使われることが多く、ときには泊り込みで仕事をしたり、小学校の子供を危害から護るために、夜間の学校寄宿舎の警備もさせられた。幹部は内地の訓練をおわって、十七年一月早々ハルピンの開拓指導員訓練所に入所した。二月中頃、補充隊員が一人入ってきた。このころ他の班はつぎつぎと入植地へ出て行き、上伊那班だけがとり残されていた。三月へ入ると団長は、一人で弥栄を訪問、二月末に現地踏査をした状況を報告し、入植地は関東軍が決定権をもって計画したことを聞かされた。正式発表は三月末で、「入植決定せり、入植日は四月十日、ハルピンに集合せよ。」の電報を受けた。基幹先遣隊員がハルピンへ出て、団長・幹部との打ち合わせをして、初めて入植地がわかったのである。入植式は一切満州拓殖公社が手はずを整えておいたので、予定通り行われた。ジャラントンから二台のトラックで現地へ入ったが、中国人はみな気持ちよく出迎えた。第十一次太平溝富貴原郷開拓団郡市別在籍数一覧郡市名戸数在籍人員昭和20年8月8日以前死亡帰還者退団者出征者人員出征者の生死復員死亡未帰還不明在団者人員在団者の生死引揚げ死亡未帰還不明上伊那郡95戸302人7人6人34人23人10人1人255人168人74人13人合計953027634231012551687413『長野県満州開拓史(名簿編)』より作成第十一次太平溝富貴原郷開拓団幹部構成(昭和20年8月9日現在)職名氏名備考団長村上顕明治30.4.20生上伊那郡朝日村副団長白鳥儀八郎明治23.11.1生上伊那郡箕輪村経理指導員林英生明治37.8.16生上伊那郡中沢村農事指導員北沢正吉大正4.3.29生上伊那郡伊那町警備指導員田中二一明治28.12.20生上伊那郡伊那町保健指導員山下静雄国民学校長桐原長人大正3.12.20生上伊那郡朝日村農事指導員岡正大正5.1.1生上伊那郡中箕輪村農事指導員岡正の調査書により作成


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