箕輪町誌(自然現代編)

箕輪町誌のデジタルブック 自然現代編


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被露宴式が行なわれたその座敷に、嫁を中央に側嫁、脇嫁とお相伴様として未婚の女性招待客をすえ、嫁座の宴席が設けられる。その時嫁にはお高盛り飯を親碗に盛り、角樽(祝儀樽)と同時に持参した藁つとに入れてきた腹合せの鰯に水引をかけて本膳が出される。お高盛り飯怯明朝握り飯にして食べる。これがすむと宴席が改められ、「一見の座敷」が設けられ、嫁方から迎えた「珍客」が着席する。婿入りの折の嫁方の料理より劣らぬようにつとめ、膳部は吸物(一ニ品、五品)、盛込、お平、茶津(代引)二ノ碗、猪口皿、中付、査、飯、汁、引物、手塩を出す。「イナダ」を引物にし、刺身は「マグロ」や「ブリ」を使う。汁物は汁だけを吸って、持ち帰るのが慣習であった。取肴として重詰、どんぶりに盛ったのが廻って自由にとって食べた。宴の中途で嫁、婿は身軽な仕度に着替えて、嫁は鉄撲親と共に「珍客」にお酌をして回った。宴はこれを境にして終りに近づくと「わらじ酒」が大杯かどんぶりで出され、一廻りして「珍客」は控室にもどる。この席へ「おたちは」として蕎麦が出されて食べおわり次第帰路につく。婿方では総出で見送り、新郎、新婦は門先まで見送って別れた。今では披露宴は結婚式と共に、公民館、料理屋、会館などで行なわれて、諸式が簡素化されてきた。鉄接付披露宴が座敷で行なわれている時、台所では鉄媛付の儀式があり、鉄撲親は鉄撲付の調度品に相当する金円を御祝儀として嫁に贈る。この儀式が終ると鉄撲かねばやし躍が始まる。当日婿方に集まった老若男女が入り混じって嫁の持参した菓子を食べ、飲み唄い、踊りもでて無礼講よろしくさかんに躍し立てる。珍客の表座敷との境のびょうぶも取除かれて、披露宴と鉄撰曜はまずまず佳境にはいる。部落によっては、鉄撲離の嫁の引出物として若い衆が一日がかりで人参、牛葉、とうもろこしの毛等で吸物椀に女陰、男根を作り、花嫁に進上する風習がある。村廻り昔は結婚式翌日に、嫁は丸雷姿で鉄嬢親か村内の親戚の主なる家の妻に伴われて、区長、神社、寺、親戚、組内を廻り挨拶をした。荷物披露として親戚、組の人に見せたが、大正末期頃より廃止された。


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