箕輪町誌(自然現代編)

箕輪町誌のデジタルブック 自然現代編


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天には煤煙躍り、地には車馬の轄醸繁きも一時にして、去る三十三、四年の一般財界の恐慌はかかる新事業に大打撃を与え、その時倒るるもあり、又は諸種の弥縫等に依って、辛くも続けしものもありしが実に三十七、八年は我事業界の一草命期にして、此の種の事業は悉く潰倒せりと言うも過言にあらず。而して是等原因については、種々にあれども、要するにその当時に於ける土地の要求如何を察するのいとまなく全く一時の人気に依って成立せる事業なれば、あるいは到底かかる運命は免れざりし所ならんか。而してその後を受けたる現時の商業界は如何と言うに、一時沈滞の色ありしは余儀なき事にしてその後漸次発達活動の色を呈せしも、また以前の苦き経験に鑑み、突飛なる事業に手を出すもの少く皆堅実なる主義の下に、着々基礎を固めつLあるは、喜ぶべき現象というべく、常に近郷近在の需要を満すと共に、米穀、肥料、石油の如きは、伊那町は勿論、遠く下伊那飯田辺に至る迄輸出し、昨四十一年度の扱高を聞くに優に十万を上れる由、実に斯界に於ける上、下伊那の覇者たる地位にあり。而して之紘一寸商品の仕入先は、穀類に於ては直江、津を第一とし、東京、横浜之に次ぎ、肥料は同じく横浜、東京、越後方面とし稀には名古屋方面より来るものあり、呉服、太物、雑貨は名古屋、東京、伯仲の間にあるも、中央西線開通の暁は、多少の変動を生ずるならん。尚当地にはこ銀行あり、合わせて資本金十万、常に当地の実業機関として任務を尽しつあり、此の地の商業資本は二銀行を加えて十八万と見れば大差なからん。次に目下の小売相場の一斑を知る参考に商品数種を挙ぐ。白米十六銭五厘麦七銭五厘大豆八銭小豆十二銭五厘醤泊三十二銭(以上の品各壱升につき〉砂糖二十四銭(壱斤につき)木炭一円(十三貫五百匁)賃金五十銭(職工一日につき)金利三銭五厘(百円につき日歩〉缶詰業の字句が見え、起業の拡張と米穀、肥料、石油輸一寸の、業者の活況ぶりが記されていて、なかなか興味深


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