松島王墓を考える

松島王墓を考える - 箕輪町図書館蔵書のデジタルアーカイブ


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形象埴輪形象埴輪には、主に次のようなものがあります。◎家形埴輪…家や倉庫などの屋敷を表したもの。◎人物埴輪…人を表したもの。武人、農夫、楽器奏者、巫女、貴婦人、力士等。◎動物埴輪…動物を表したもの。馬、牛、犬、猪、水鳥、魚等。◎器財埴輪…武器や武具、特別な道具を表したもの。4世紀頃から家形埴輪、動物埴輪、器財埴輪が見られるようになり、5世紀に入ってから人物埴輪が現れるようになりました。初めは西日本で作られていた形象埴輪は、時期が下るにつれ東日本でもさかんに作られるようになり、西日本で埴輪の生産が縮小されても、東日本では7世紀に入るまで作られ続けました。形象埴輪は、当時の人々の服装や髪形を知る上で、貴重な史料にもなります。松島王墓の形象埴輪江戸時代後期に記された『伊那志略』には、松島王墓から多くの人物埴輪が出たと記されています。現在確認出来る形象埴輪には、人物埴輪、動物埴輪、器財埴輪があります。人物埴輪には腕と胴下半部があり、胴部には帯の結び目を表現したと思われる貼り付け装飾がみられます。動物埴輪は馬の足と思われるもので、細身の円筒形をしています。器財埴輪は矢を入れる靱形埴輪で、矢筒部と鍛部が見つかっています。矢筒はタガ状に巻く帯と鋲留が粘土で表現され、立体的な印象を与えます。また、線で格子に区切り、赤色の顔料が塗られています。鏃部は矢筒にはめ込あ形で、粘土を貼り付けて鏃を表現しています。この靭形埴輪は「奴凧形」といわれるタイプで、関東で多く出土しています。形象埴輪は飯田市の古墳からも見つかっていますが、王墓の形象埴輪と類似した埴輪は以下の通りです。◎高岡1号古墳(飯田市座光寺/8~9期)…人物埴輪(巫女)◎御猿堂古墳(飯田市竜丘/9期)…器財埴輪(靱)円筒埴輪と形象埴輪に類似点がある上記の古墳と同じ頃に造られたと考えた場合、松島王墓は6世紀前半~中頃(8~9期)に造られた可能性があるのではないかと考えられます。松島王墓の人物埴輪高岡1号古墳の人物埴輪松島王墓の形象埴輪松島王墓の靱形埴輪御猿堂古墳の靱形埴輪靭形埴輪(奴凧形)


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