>> P.3
前方部について松島王墓の特徴としては、前方部幅が32m、後円部直径が30mでほぼ等しく、更に前方部の幅と径がほぼ等しい、正三角形のような形をしている点が挙げられます。前方部が同様の形状をしている古墳には、塚原二子塚古墳(前方部幅44.6m、後円部径41.4m/7~8期)、権現堂1号古墳(前方部幅推定35m、後円部径推定34m/8期)等があります。また、青塚古墳も、後世の改変により、元の形がわかりにくくなっているものの、同様の傾向があるものと考えられます。高岡1号古墳(前方部幅約35.7m、後円部幅約35.7m/8~9期)や、御猿堂古墳(前方部幅34.8m、後円部径31.4m/9期)も、前方部幅と後円部直径がほぼ等しい長さですが、前方部の長さが長いという特徴があります。御射山獅子塚古墳(9期)は、後円部直径25.5mに対し、前方部幅44.8mと、前方部が極端に大きい形状を示しています。時代が新しくなるにつれて、前方部が発達し、大きくなるという傾向があるようです。松島王墓は、前方部の高さが7.7m、後円部の高さが7.0mで、現状では、前方部が後円部よりも高い形状を示しています。墳丘の高さについては、後世の改変による影響がある可能性が高いため、参考にしづらいことは否めませんが、現況で前方部が後円部よりも高い古墳としては、高岡1号古墳(8~9期)、御射山獅子塚古墳(9期)、塚原二子塚古墳(7~8期)、御猿堂古墳(9期)、青塚古墳(9~10期)があります。形が一番似ている古墳はどれ?これまでの観点から、松島王墓に似た古墳を抽出すると、以下の通りになります。特徴類似古墳大きさ(+-5m)青塚古墳(9~10期)、御射山獅子塚古墳(9期)、丸山古墳(7~8期)、権現堂1号古墳(8期)、代田獅子塚古墳(8期又は9期)、久保田1号古墳(9期)、金山二子塚古墳(9期)、水佐代獅子塚古墳(9期)造り出し権現堂1号古墳(8期)?周溝前方部の形前方部の方が高い溝口の塚古墳(8期)、高岡1号古墳(8~9期)、溝天神塚古墳(9期)、水佐代獅子塚古墳(9期)、上塚原二子塚古墳(7~8期)、御猿堂古墳(9期)、久保田1号古墳(9期)、大塚古墳(7~8期)、兼清塚古墳(7期)青塚古墳(9~10期)、塚原二子塚古墳(7~8期)、権現堂1号古墳(8期)青塚古墳(9~10期)、高岡1号古墳(8~9期)、御射山獅子塚古墳(9期)、塚原二子塚古墳(7~8期)、御猿堂古墳(9期)全ての項目が該当する古墳は無いため、松島王墓と全く同じ形の古墳は存在せず、唯一の古墳であることがわかります。該当項目が最も多いもの(3点)は、塚原二子塚古墳(7~8期)、権現堂1号古墳(8期)、青塚古墳(9~10期)です。次に2点で、高岡1号古墳(8~9期)、御射山獅子塚古墳(9期)、久保田1号古墳(9期)、水佐代獅子塚古墳(9期)、御猿堂古墳(9期)があります。こうしたことから、松島王墓は8~9期(5世紀末~6世紀後半)頃に造営された可能性が高いのではないかと思われます。また、墳丘の形等が似ている青塚古墳が横穴式石室であることを考慮すると、松島王墓も横穴式石室である可能性が高いと思われます。