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Ⅰ古墳のかたちから考える古墳のかたち古墳とは、人間が大地に土や石を積み上げることで人為的に造った空間(墓)です。弥生時代に造られていた、周りに溝を持つ墳丘の無い墓(方形周溝墓)とは一線を画し、その時代を特徴付けるものとなっています。古墳の形には、主に次のようなものがあります。◎円墳…円形の墳丘を造った古墳。最も多く見られる古墳。◎方墳…方形の墳丘を造った古墳。一般的には正方形をしたものが多い。◎前方後円墳…円形の主丘に、方形の壇状部が付設古墳の種類している古墳。大型古墳によく見られる。◎前方後方墳…方形の主丘に、方形の壇状部が付設している古墳。前方後円墳に比べるとやや小型。◎帆立貝形古墳…円墳に造り出しが付設されたと考えられている。多くが5世紀に造営された。◎上円下方墳…墳丘の下段が方形で、上段に円墳が載ったもの。箕輪町内の古墳では、松島王墓が唯一の前方後円墳であり、その他は全て円墳です。前方後円墳の特徴前方後円墳は、空間的には、南は鹿児島県から北は山形県・岩手県まで、日本列島のほぼ全域に分布しています。また、時間的には、古墳時代のほぼ全期間にわたって造営されています。前方後円墳の発生については、日本発生説の他に、大陸からもたらされたとする説もあります。しかし、その数は圧倒的に日本が多く(朝鮮半島にもある)、前方後円墳は、日本を代表する古墳の形といっても過言ではありません。古墳の規模に関しては、中国では墳丘の高さが重要視されますが、日本では平面の大きさが重要視され、今日でも墳丘の長さで比較する習慣があります。また、日本の大型古墳には、明確で広大な濠(周濠)がめぐらされているものが多いことも特徴です。日本では、弥生時代の環濠集落をはじめ、室町時代の環濠都市や、城郭の堀等、後世に到るまで水を用いた周濠が用いられています。また、日本の中型~大型の古墳には、葺石で表面を覆った古墳が多く認められます。これについては、墳丘の土の流失を防ぐための施設ではないかと考えられていますが、中国や朝鮮半島の古墳では、葺石の使用はほとんど認められていません。そのため、その目的・機能が何であったかは別として、石で古墳の斜面を覆うということ自体が、日本の古墳の特徴の一つであると思われます。松島王墓のかたち松島王墓は、後円部を東に向けた、全長約58mの前方後円墳です。前方部は幅32m、高さ7.7m、後円部は直径30m、高さ7mを測ります。上伊那地方では唯一の前方後円墳で、中央のくびれ部の両側に造り出しが設けられています(現在明確な造り出しが残っているのは北側のみ)。また、古墳の周囲には周溝があったと考えられています。その他に、測量図からは、後円部の直径と前方部の長さ及び前面の三箇所の長さがほぼ等しいこと(古墳時代後期になると前方部が大型化する)や、前方部頂松島王墓の方が後円部頂より高く造られていること。また、後円部頂に平坦な面がほとんど認められないことから、竪穴式石室を想定し難く、横穴式石室である可能性が高いこと等を読み取ることができます。