箕輪町誌(自然現代編)

箕輪町誌のデジタルブック 自然現代編


>> 814

考えて見ると当初鉄道敷設の際この迂回線を採用したのは在郷の利便を大きく受けると言う一貫しての政策によるものと考え、国家においては総ての利益を平等にしようとする主旨によるものであると考えるが、一地方の利便をもって、全線の利益を犠性となすは、やむを得ない場合もあるが、今度の計画の如く大巾なる更改をしよLうとする時は、直接に不便、不利を蒙る地元の調査を行ない救済策を講じ、損失を受ける地方民心を善導して産業の開発上適当の道を考えるべきと思われる。鉄道敷設以来この方交通、文化の恩恵にあずかり、上・下伊那は固有鉄道中央線の一部と中央線辰野駅を起点として、下伊那郡飯田町迄私設伊那電気鉄道の開通により、わずかにその恩恵を受けるのみであったので、前々よりこの開発をしていわゆる当地方と遠江国を結ぶ遠信鉄道の達成を企図して何年か前から運動してきた所、突O然塩尻下諏訪を結ぶ鉄道敷設の計画を聞き、私共地方住民の驚きは一方ならぬものがあった。万一これが完成した暁には現在の中央線辰野経由線は自然に運転回数が減少し、人貨輸送は勿論、その他に影響することは大いに認められ、当地方が受ける有形、無形の損害は実に莫大なるものがあり、民心の委縮するは勿論、地方産業文化の消長に関する所は非常に大きなものがある。当局に於ては相当の救済策を講じる事とは確信しますが、当地方の受ける被害の甚大なる打撃と民心を考慮したならば、たとえ国策上敢行やむ得ないとしても、鉄道敷設法による予定線路でいわゆる「直一鳩信鉄道」の完成を期し、長野、静岡両県を貫通する固有鉄道が敷設されることは伊那の広大なる土地を広く紹介して、無限の資源を開発して、地方振興と福利増進の突を上げ、鉄道本来の使命を果し、遠江と信濃の国境四余哩の敷設によって全線二百哩になる日本海と大平洋を連絡できれば、国家大局的の見地より軍事並に産業上重要なるものであるから、塩尻|下諏訪問直通鉄道完成と同時に多年に渡る当地方の要望した、遠信鉄道の完成を切望しているものである。地方文化の逆転することを避け、国家興隆の為、産業発展と民力充実のため、実現されんことを強く要望するものである。」、以上の請願状況を見るとき、昭和三十八年より初まった岡谷|塩尻聞の直通問題も上・下伊那で結成された、伊那谷開発期成同盟会が、国鉄側に要望した各事項も、時勢の移り変りによって、地域住民の意見を採たくし


<< | < | > | >>